展覧会：シモーヌ・ファタル。不信感の一時停止

フランスとレバノンにルーツを持つ学際的な芸術家、シモーヌ・ファタル（1942年ダマスカス生まれ）は、バレンシア州政府主催の2024年度フリオ・ゴンサレス賞の受賞者です。現代美術の発展に貢献するとともに世界的な影響を与えてきた点が高く評価され、同賞の受賞に至りました。そうした彼女の功績を投影したものの中に、IVAM（バレンシア現代芸術院）で開催される今回の展覧会があります。本展の展示は、このアーティストの主要な創作活動を振り返るものとなっています。

ファタルは、彫刻や写真、絵画といった手段を使いながら典型的な人物像を形作ることで、シュメールのおとぎ話からアラビアの叙事詩までの歴史上の物語を現在によみがえらせています。彼女にとって時間とは、過去、未来、そして現在が混ざり合う、可塑性のある存在なのです。したがって、この展覧会は、ファタールの人類と歴史における個人の位置についてのビジョンに寄り添う機会となります。